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プレジャーボートの規制水域拡大 琵琶湖・赤野井湾
2020.01.31
中日新聞
淡水で採れる真珠「琵琶湖パール」の養殖が行われている琵琶湖の赤野井湾(守山市木浜町-草津市下物町)で、県が指定するプレジャーボートの航行規制水域が拡大される。ボートが起こす波で、真珠の生育に影響が出ており、漁業者から対応を求める声が出ていた。学識者らによる「琵琶湖レジャー利用適正化審議会」からの答申を受けて、三月中旬にも適用される。
県琵琶湖のレジャー利用の適正化に関する条例では、水産業の養殖場の生育環境を保全するため、プレジャーボートの航行規制水域を定めている。指定水域で航行し、県の停止命令に応じない場合は、罰金が科せられる。
赤野井湾は、湖岸から一キロほどのところに消波堤があり、湾内は波が穏やか。このため、モーターボートの後部で、板状の滑走具に乗って水面を滑るウエイクボードを楽しむレジャー客の姿が、頻繁に見られるようになった。
一方で、赤野井湾には現在、真珠の養殖棚三機が設置されている。玉津小津漁協によると、ボートの起こす波の衝撃で、母貝の「池蝶貝」が死んでしまったり、真珠が変色したりする被害が出ている。また、養殖棚の上で作業していた漁業者が衝撃で転落し、けが人も出ているという。
漁業者らの求めで県は二〇一二年から、湖岸の延長一・八キロの範囲を規制水域にし、ブイを設置した。だが、消波堤とブイの間の指定水域となっていない場所をボートが出入りして、養殖への被害が続いていたという。このため、指定水域をさらに湖岸延長で〇・九キロ分伸ばして、消波堤の内側全域を航行禁止とする。
漁協や県は、これまでも日本ウエイクボード協会県支部と連携して、レジャー客らに航行の自粛を求めてきた。だが、周知が広まらなかったため、今回、規制区域の拡大に踏み切った。
漁協の田中善秋組合長(72)は「母貝が育つには三年もの月日がかかり、ボートの起こす波による被害は、痛手になっていた。長年、悩まされてきたが、規制されることになり、ほっとしている」と話している